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解答・解説

第12問 大規模言語モデルによる住民向けFAQチャットの構築

 ある地方自治体では、住民向けのFAQチャットを Amazon Bedrock の大規模言語モデルで構築しようとしています。FAQの基となる説明資料はPDF形式で作成されており、費用を抑えた上で、より正確に回答が提供できる仕組みを構築したい。最も有効なアプローチを選択してください。

  1. プロンプト送信時にプロンプトエンジニアリングでPDF形式の全ての説明資料を要約して、プロンプトに埋め込んだ上で Amazon Bedrock へ送信する。
  2. すべてのPDF形式の説明資料を使って Amazon Bedrock のモデルをファインチューニングして、この修正モデルをプロンプトの入力処理に利用する。
  3. PDF形式の説明資料を Amazon Bedrock のナレッジベースに登録して、利用者のプロンプト送信時にナレッジベースを参照してコンテキストを付与する。 [正しい解答]
  4. PDF形式の説明資料から抜粋したサンプル回答をプロンプトに直接的に組み込んで、利用者の質問時に例示を参照させて適切なコンテキストを付与する。

(問題ID:AIF203C012)

解答

正しい解答:C. PDF形式の説明資料を Amazon Bedrock のナレッジベースに登録して、利用者のプロンプト送信時にナレッジベースを参照してコンテキストを付与する。

△ 判定不能

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徹底解説

 PDF形式の説明資料を活用して、住民向けのFAQチャットを Amazon Bedrock の大規模言語モデル(LLM:Large Language Model)で構築する際に、費用を抑えた上で、正確に回答できる仕組みとするための最も有効なアプローチは、「PDF形式の説明資料を Amazon Bedrock のナレッジベースに登録して、利用者のプロンプト送信時にナレッジベースを参照してコンテキストを付与する」 ことです。このように外部のナレッジベースから関連情報を検索して、その情報を生成AIモデルに与えて回答を生成する手法を検索拡張生成(RAG:Retrieval-Augmented Generation)といいます。ナレッジベースとは、外部の情報源を体系的に格納して、生成AIが回答を作成する際に参照できる 「知識のリポジトリ」 です。説明資料を登録しておくことによって、モデルは問い合わせ内容に応じて必要な部分だけを検索して、回答に組み込むことができます。これによって、モデルがすべての情報を内部に保持する必要がなくなり、効率的かつ、より正確な応答が可能になります。もちろん、ここで記載するまでもないことだと思いますが、生成AIの回答が常に完全に正確という訳ではないことをご留意ください。

 その他の選択肢は、LLMを活用したFAQチャットにおいて、費用を抑えた上で、正確に回答できる仕組みとする有効なアプローチではありません。「プロンプト送信時にプロンプトエンジニアリングでPDF形式の全ての説明資料を要約して、プロンプトに埋め込んだ上で Amazon Bedrock へ送信する」 ことは、すべてのPDFの要約を都度作成・更新する運用負荷が非常に高く、要約の精度や網羅性に依存するため、肝心な細目や例外条件が抜けやすい構造的なリスクがあります。さらに、プロンプトへ大量の要約テキストを埋め込むとトークン使用量が増大して、推論コストとレイテンシーが悪化します。問合せの度にすべての情報を持ち込むのではなく、必要部分だけを動的に検索・付与するRAGの方が、費用・精度・運用のいずれでも有効なアプローチです。
 「すべてのPDF形式の説明資料を使って Amazon Bedrock のモデルをファインチューニングして、この修正モデルをプロンプトの入力処理に利用する」 ことは、学習コストが高く、更新のたびに再学習や検証が必要になり、継続的な保守負担が重くなります。ファインチューニングはモデルが知識を内包するため、静的な規約や専門用語への適応に有効な場面もありますが、FAQチャットのように内容の更新が想定されるドキュメント群を丸ごと学習させるのは得策ではありません。
 「PDF形式の説明資料から抜粋したサンプル回答をプロンプトに直接的に組み込んで、利用者の質問時に例示を参照させて適切なコンテキストを付与する」 ことは、few-shotの例示で回答を誘導する発想ですが、FAQチャットの運用には不向きです。固定的な例示では質問の多様性や改訂への対応が難しく、網羅性や正確性に欠けます。例示が少なければ誤った一般化が生じる恐れがあり、例示を増やせばプロンプトが肥大化してコストや遅延が増える上、必要な情報を正確に参照することも困難です。
 なお、このユースケースの場合、プロンプトエンジニアリングだけでは対応は難しいため、ファインチューニングかRAGかで検討できていれば望ましいですね。下表に両者の比較を示します。


ちなみに...
 Knowledge Bases for Amazon Bedrock は、Amazon Bedrock 上でRAGを簡単に構築することができるマネージド型の機能です。これを使うことで、基盤モデルに対して、企業独自のデータを組み合わせた文脈に基づく高精度な応答生成が可能になります。なお、Amazon Bedrock は、テキスト生成や画像生成などのAIモデルを開発者が手軽に利用して、アプリケーションに組み込めるように設計されたマネージド型の生成AIサービスです。

問題掲載日:2025-10-11


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